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【農業】技術者向け「品質工学の紹介(パラメータ設計)」 [【YouTube】]

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【農業】技術者向けに作成した「品質工学の紹介(パラメータ設計)」のプレゼンをご紹介します。

※「農業」ではなく工業系【製造】技術者向けに作成したプレゼンはこちらにあります。
※「農業」ではなく工業系【設計】技術者向けに作成したプレゼンはこちらにあります。

初心者向けに作成してありますので、「SN比」などの難しい用語は使っておりません。
気軽にご覧下さい。

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このブログ記事は、YouTubeの動画でもご覧いただけます。

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今からサツマイモの栽培条件を最適化します。
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栽培条件は全部で8つあります。

■栽培条件
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・水はけ(透水性)
・肥料の成分A
・肥料の成分B
・土質
・植え付け間隔
・うね幅
・うね高さ
・植え方
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どういう条件の組合せで実験したら良いのでしょうか?
総当たりだと、2^1×3^7=4374通りの組合せになります。
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例えば、こんな実験のやり方が考えられます。

最初に「水はけ(透水性)」を【高い】と【低い】で振って実験します。
すると、サツマイモの収穫量が多くなったのは【高い】でした。

次に「肥料の成分A」を【5】【10】【15】と振って実験します。
すると、サツマイモの収穫量が多くなったのは【10】でした。

このようにして、順番に最適化していく方法があります。
最終的に、【高い】【10】【15】【イ】【40】【80】【10】【垂直植え】という条件の組合せが「良い」という結果になりました。

この組合せが、総当たり(4374通り)の組合せの中で、一番良い条件の組合せでしょうか?
もっと良い条件はないのでしょうか?
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先ほどの実験では、ある(緑の)ライン周辺でしか条件を振っていません。
もしも、(赤い)ラインの周辺で実現したら、もっと良い条件が見つかった、かもしれません。
しかし、赤いラインの周辺では実験していませんので不明です。

じゃあ、どういう風に条件を振ったら、4374通りの中で一番良い条件が得られるのでしょうか?
1つだけ確実な方法があります。
それは↓です。
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総当たり実験をすれば、完璧な開発(実験)結果が得られます。
でも、そんな実験できるでしょうか?
技術者は、そんなに暇ではありません。
現実的には無理です。
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そこで、「効率よく、満遍なく全栽培条件をチェックする方法」をご紹介します。
それは、ある法則に従って、18本のラインを引いて(つまり18通りの条件で)実験する方法です。
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このように、18本のラインを引いて実験すれば、総当たりに近い結果が得られる方法があります。
だから、とても効率的な実験ができます。
そのある法則とは「L18直交表」という道具を使う方法です。
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L18直交表とは、このような表の割り付けになります。
全部で8つの条件を割り付けると、18通りの組合せが出来上がります。
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L18直交表の1行目を見てみると、このような組合せになります。

1行目:水はけ:【高い】、肥料の成分A:【5】、肥料の成分B:【5】、土質:【イ】、植え付け間隔:【20cm】、うね幅:【70cm】、うね高さ:【10cm】、植え方:【水平植え】

この18通りの条件は、ランダムではありません。
各条件がバランス良く配置された組合せになっています。
※直交表の詳しい割り付け方については、実験計画法の本をご参照下さい。
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このL18直交表の割り付けを気軽に試してみたい人は、こちらからL18直交表のエクセルファイル【無料】をダウンロードすることができますので、ぜひお試し下さい。
https://masudaqe.blog.ss-blog.jp/2011-01-02-6
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L18直交表のエクセルファイル【無料】をダウンロードすると、こんな感じになってます。
左の水色のセルに条件を記入すると、右側のL18直交表にパッと割り付けがされます。
どのような割り付け方になっているのか、気になりますよね。
ぜひお試し下さい。
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L18直交表は、4374通りの中から18通りの条件を抜き出して実験します。
しかし、本当に求めたい組合せの条件とは、4374通りの中で一番良い(収穫量が多い)組合せになります。

このマス目は、4374個あります。
緑で着色したマス目は18個あります。
つまり、L18直交表とは、4374個を18個にサボって実験するやり方です。
オレンジで着色したマス目が4374個の中で一番良い組合せだとすると、このオレンジのマス目をどうやって求めるのでしょうか?
これからその求め方を説明します。
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このグラフは、「要因効果図」と呼ばれるものです。
縦軸は、収穫量(専門的には収量と言います)です。
横軸は、L18直交表に割り付けた(栽培)条件です。
各(栽培)条件において、収穫量の多い条件にオレンジの印を付けていきます。
このオレンジの印の付いている組合せが、4374通りの中で一番収穫量の多い組合せになります。

それでは、この要因効果図はどうやって作るのでしょうか?
次に要因効果図の作り方を説明します。
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栽培条件A「水はけ」の要因効果図の作り方を説明します。

「水はけ」が【高】の組合せは、L18直交表の中で1行目〜9行目です。
そこで、この9個の収穫量の平均値を求めると、「22.3」になります。
これが「水はけ」が【高】の収穫量になります。

同様にして「水はけ」が【低】の収穫量を求めると、「15.8」になります。
この2つの数字をグラフにプロットすると、「水はけ」の要因効果図になります。
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栽培条件B「肥料の成分A」の要因効果図の作り方を説明します。

「肥料の成分A」が【5】の組合せは、L18直交表の中で1、2、3、10、11、12行目です。
そこで、この6個の収穫量の平均値を求めると、「14.1」になります。
これが「肥料の成分A」が【5】の収穫量になります。

同様にして「肥料の成分A」が【10】の収穫量を求めると、「19.0」になります。
同様にして「肥料の成分A」が【15】の収穫量を求めると、「24.1」になります。
この3つの数字をグラフにプロットすると、「肥料の成分A」の要因効果図になります。
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このようにして、全ての(栽培)条件の平均値を求めると、要因効果図が出来上がります。
そして、この要因効果図から最適条件が求まります。
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最適条件が求まったので、農家の皆さんにこの最適条件を普及することにしました。

そして、この最適条件でサツマイモを栽培してもらった結果、
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A農場:収穫量:多
B農場:収穫量:中
C農場:収穫量:少
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という結果になってしまいました。
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なぜ、収穫量が全部「多」にならなかったのでしょうか?
それには理由があります。
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理由はこうです。
A農場の畑の「水はけ」は【高】、「土質」は【ハ】です。
よって、最適条件を再現することができ、予想通りの収穫量「多」となりました。
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一方、B農場の畑の「水はけ」は【低】です。
最適条件の「水はけ」が【高】だからといって、B農場の畑の「水はけ」を【低】→【高】へ変えることは、現実的に不可能です。
※「水はけ」が【高】の土をダンプカーで運び込めば可能ですが、コスト的に無理です。
よって、B農場では収穫量が「中」になってしまったのです。
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また、C農場のの畑の「水はけ」は【低】です。
そして、「土質」は「イ」です。
最適条件の「水はけ」が【高】だからといって、C農場の畑の「水はけ」を【低】→【高】へ変えることは、現実的に不可能です。
最適条件の「土質」が【ハ】だからといって、C農場の畑の「土質」を【イ】→【ハ】へ変えることは、現実的に不可能です。
※「水はけ」が【高】&「土質」が【ハ】の土をダンプカーで運び込めば可能ですが、コスト的に無理です。
よって、C農場では収穫量が「少」になってしまったのです。
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『俺の畑の土は、最適条件通りにならないんだよ』

このように、条件を最適化したとしても、その最適条件に設定できない因子、つまり「(実際には)コントロールできない因子」という因子があります。
最適化してもコントロールできないのであれば、そのような因子は、実験で最適化する意味がありません。
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ということで、
(栽培)条件には、「コントロールできる因子」と「コントロールできない因子」があります。
よって、条件をこれら2つの因子に分けることが重要なのです。

品質工学で大切な事(その1)は、
【「コントロールできる因子」と「コントロールできない因子」に分ける】
です。
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「コントロールできる因子」のことを、品質工学では「制御因子」と呼称しています。
これは「直交表に割り付ける因子」になります。

「コントロールできない因子」のことを、品質工学では「ノイズ(因子)」と呼称しています。
これは「直交表の外に配置する因子」になります。
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「コントロールできる因子(制御因子)」は、直交表に割り付けます。
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「コントロールできない因子(ノイズ因子)」は、ノイズの組み合わせを作ります。
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「コントロールできる因子(制御因子)」は左に配置し、「コントロールできない因子(ノイズ因子)」は右に配置します。
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そして、「コントロールできる因子(制御因子)」の18通りの組み合わせと、「コントロールできない因子(ノイズ因子)」の6通りの組み合わせの交差する部分に実験結果のデータを配置します。
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L18直交表の1行目の収穫量のデータは、プロットしたような結果になりました。
「コントロールできない因子(ノイズ因子)」の組合せは、(この場合は)6つあります。

この1行目の場合、
「A農場」は、【水はけ:高、土質:ハ】の組み合わせでしたので、収穫量は多くなります。
「B農場」は、【水はけ:低、土質:ハ】の組み合わせでしたので、収穫量は中位になります。
「C農場」は、【水はけ:低、土質:イ】の組み合わせでしたので、収穫量は少なくなります。
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L18直交表の2行目の収穫量のデータは、プロットしたような結果になりました。
「コントロールできない因子(ノイズ因子)」の組合せは、同じく(この場合は)6つあります。

この2行目の場合、
「A農場」は、【水はけ:高、土質:ハ】の組み合わせでしたので、収穫量は中位になります。
「B農場」は、【水はけ:低、土質:ハ】の組み合わせでしたので、収穫量は中位になります。
「C農場」は、【水はけ:低、土質:イ】の組み合わせでしたので、収穫量は中位になります。
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「理想的な最適条件」の収穫量のデータでは、プロットしたような結果になります。

「A農場」は、【水はけ:高、土質:ハ】の組み合わせでしたので、収穫量は多くなります。
「B農場」は、【水はけ:低、土質:ハ】の組み合わせでしたので、収穫量は多くなります。
「C農場」は、【水はけ:低、土質:イ】の組み合わせでしたので、収穫量は多くなります。
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この6つの収穫量について、「平均値」と「バラツキの大きさ」を計算で求めます。
そして、「平均値」と「バラツキの大きさ」のそれぞれについて、要因効果図を作成します。
※要因効果図の作成のやり方は、先ほど説明した通りです。

品質工学で大切な事(その2)は、
【「平均値」と「バラツキの大きさ」で評価する】
です。
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(収穫量の)平均値は、高い方が理想的です。
(収穫量の)バラツキの大きさは、小さい方が理想的です。
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「コントロールできない因子」の組み合わせにおいて、「平均値が高く※」かつ「バラツキが小さい」という結果が得られれば、どの農場でも収穫量が多くなり、みんなハッピーになれます。
※今回のサツマイモの最適条件では、「理想の平均値は高い」となりますが、別事例の実験では、「理想の平均値は低い」となるケースもあります。つまり、理想の平均値はケースバイケースで変わります。

品質工学で大切な事(その3)は、
【「コントロールできない因子」に影響されない最適条件を求める】
です。
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まとめます。
品質工学的な実験のポイントは以下の3つです。
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・条件を「コントロールできる因子」と「コントロールできない因子」に分ける
・「平均値」と「バラツキの大きさ」で評価する
・「コントロールできない因子」に影響されない(影響され難い)最適条件を求める
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このような最適条件を求めていこうとするのが「品質工学」です。
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【トピック】をご紹介します。
今回ご紹介しましたL18直交表の他にも、いろんな種類の直交表があります。

これはL9直交表です。
割り付けることができる制御因子は、4個(各3水準×4個)です。
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L18直交表とL9直交表を比較してみましょう。

L18直交表は、「18通りの条件」で実験しますが、L9直交表は「9通りの条件」で実験します。
つまり、1/2の規模の実験になります。

L18直交表は、割り付け可能な因子は「8個」ですが、L9直交表は「4個」です。
つまり、1/2の規模の実験になります。

L18直交表は、総当たり「4374通り」の中から一番良い条件が探しますが、
L9直交表は、総当たり「81通り(3^4=81)」の中から一番良い条件を探します。
つまり、1/54の規模の実験になります。

ということで、L9直交表は、1/2の規模の実験の割には、探索範囲が狭く、実験効率の悪い直交表ということになります。
割り付ける因子が4個しか存在しないのであれば、L9直交表を使いますが、割り付ける因子が8個あるのにL9直交表を使うのはナンセンスです。
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次に2水準系のL8直交表をご紹介します。
割り付けることができる制御因子は、7個(各2水準×7個)です。
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L18直交表とL8直交表を比較してみましょう。

L18直交表は、「18通りの条件」で実験しますが、L8直交表は「8通りの条件」で実験します。
つまり、10通り少ない実験です。

L18直交表は、割り付け可能な因子は「8個」ですが、L8直交表は「7個」です。
つまり、因子は1個少ないだけです。

L18直交表は、「3水準」で振りますが、L8直交表は「2水準」で振ります。
つまり、水準の数が1つ少なくなるのですが、制御因子の傾向を見るのであれば、それほど支障は無いのかもしれません。

ということで、L8直交表は、割り付けることができる因子がL18直交表とがそれほど変わらないにも関わらず、実験回数は半分以下になりますので、とても便利な直交表ということになります。
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品質工学でよく使う直交表の一覧です。

制御因子の総数と、2水準/3水準の数によって、6種類あります。
御自身の実験規模にあった直交表を選ぶことが重要です。
各種直交表の割り付けは、エクセルファイルがダウンロードできるようになっておりますので、興味がありましたらぜひお試し下さい。
https://masudaqe.blog.ss-blog.jp/2018-04-14
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このプレゼン(30分程度です)をご希望の方は、下記のメールアドレスにご連絡下さい
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