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【設計】技術者向け「品質工学の紹介(パラメータ設計)」 [【YouTube】]

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【設計】技術者向けに作成した「品質工学の紹介(パラメータ設計)」のプレゼンをご紹介します。

【製造】技術者向けに作成したプレゼンはこちらにあります。

初心者向けに作成してありますので、「SN比」などの難しい用語は使っておりません。
気軽にご覧下さい。

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このブログ記事は、YouTubeの動画でもご覧いただけます。

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今からボールペンのペン先の設計パラメータを最適化します。
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設計条件は全部で8つあります。

■設計条件
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・使用温度
・インクの粘性
・インクの種類
・筆圧
・ペン先の構造
・ペン先の角度
・ボールの材質
・ボールの粗さ
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どういう条件の組合せで実験したら良いのでしょうか?
総当たりだと、2^1×3^7=4374通りの組合せになります。
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例えば、こんな実験のやり方が考えられます。

最初に「使用温度」を【常温】と【低温】で振って実験します。
すると、ボールペンの書き心地が良くなったのは【常温】でした。

次に「インクの粘性」を【低】【中】【高】と振って実験します。
すると、ボールペンの書き心地が良くなったのは【中】でした。

このようにして、順番に最適化していく方法があります。
最終的に、【常温】【中】【ハ】【低】【ヘ】【中】【ト】【鏡面】という条件の組合せが「良い」という結果になりました。

この組合せが、総当たり(4374通り)の組合せの中で、一番良い条件の組合せでしょうか?
もっと良い条件はないのでしょうか?
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先ほどの実験では、ある(緑の)ライン周辺でしか条件を振っていません。
もしも、(赤い)ラインの周辺で実現したら、もっと良い条件が見つかったかもしれません。
しかし、赤いラインの周辺では実験していませんので不明です。

じゃあ、どういう風に条件を振ったら、4374通りの中で一番良い条件が得られるのでしょうか?
1つだけ確実な方法があります。
それは↓です。
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総当たり実験をすれば、完璧な開発(実験)結果が得られます。
でも、そんな実験できるでしょうか?
技術者は、そんなに暇ではありません。
現実的には無理です。
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そこで、「効率よく、満遍なく全設計条件をチェックする方法」をご紹介します。
それは、ある法則に従って、18本のラインを引いて(つまり18通りの条件で)実験する方法です。
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このように、18本のラインを引いて実験すれば、総当たりに近い結果が得られる方法があります。
だから、とても効率的な実験ができます。
そのある法則とは「L18直交表」という道具を使う方法です。
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L18直交表とは、このような表の割り付けになります。
全部で8つの条件を割り付けると、18通りの組合せが出来上がります。
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L18直交表の1行目を見てみると、このような組合せになります。

【L18直交表の1行目】
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使用温度:【常温】
インクの粘性:【低】
インクの種類:【イ】
筆圧:【低】
ペン先の構造:【ニ】
ペン先の角度:【狭】
ボールの材質:【ト】
ボールの粗さ:【粗い】
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この18通りの条件は、ランダムではありません。
各条件がバランス良く配置された組合せになっています。
※直交表の詳しい割り付け方については、実験計画法の本をご参照下さい。
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このL18直交表の割り付けを気軽に試してみたい人は、こちらからL18直交表のエクセルファイル【無料】をダウンロードすることができますので、ぜひお試し下さい。
https://masudaqe.blog.ss-blog.jp/2011-01-02-6
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L18直交表のエクセルファイル【無料】をダウンロードすると、こんな感じになってます。
左の水色のセルに条件を記入すると、右側のL18直交表にパッと割り付けがされます。
どのような割り付け方になっているのか、気になりますよね。
ぜひお試し下さい。
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L18直交表は、4374通りの中から18通りの条件を抜き出して実験します。
しかし、本当に求めたい組合せの条件とは、4374通りの中で一番良い(書き心地が高い)組合せになります。

このマス目は、4374個あります。
緑で着色したマス目は18個あります。
つまり、L18直交表とは、4374個を18個にサボって実験するやり方です。
オレンジで着色したマス目が4374個の中で一番良い組合せだとすると、このオレンジのマス目をどうやって求めるのでしょうか?
これからその求め方を説明します。
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このグラフは、「要因効果図」と呼ばれるものです。
縦軸は、「書き心地」です。
横軸は、L18直交表に割り付けた(設計)条件です。
各(設計)条件において、書き心地の良い条件にオレンジの印を付けていきます。
このオレンジの印の付いている組合せが、4374通りの中で一番書き心地の良い組み合わせになります。

それでは、この要因効果図はどうやって作るのでしょうか?
次に要因効果図の作り方を説明します。
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設計条件A「使用温度」の要因効果図の作り方を説明します。

「使用温度」が【常温】の組合せは、L18直交表の中で1行目〜9行目です。
そこで、この9個の「書き心地」の平均値を求めると、「16.0」になります。
これが「使用温度」が【常温】の書き心地になります。

同様にして「使用温度」が【低温】の書き心地を求めると、「9.5」になります。
この2つの数字をグラフにプロットすると、「使用温度」の要因効果図になります。
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設計条件B「インクの粘性」の要因効果図の作り方を説明します。

「インクの粘性」が【低】の組合せは、L18直交表の中で1、2、3、10、11、12行目です。
そこで、この6個の「書き心地」の平均値を求めると、「7.8」になります。
これが「インクの粘性」が【低】の書き心地になります。

同様にして「インクの粘性」が【中】の書き心地を求めると、「12.7」になります。
同様にして「インクの粘性」が【高】の書き心地を求めると、「17.8」になります。
この3つの数字をグラフにプロットすると、「インクの粘性」の要因効果図になります。
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このようにして、全ての(設計)条件の平均値を求めると、要因効果図が出来上がります。
そして、この要因効果図から最適条件が求まります。
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最適条件が求まったので、この最適条件でボールペンを作り、市場へ出荷することにしました。

この最適設計条件のボールペンで書いてもらった結果、
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Aさん:書き心地:良い
Bさん:書き心地:普通
Cさん:書き心地:悪い
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という結果になってしまいました。

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なぜ、「書き心地」が全部「良い」にならなかったのでしょうか?
それには理由があります。
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理由はこうです。
Aさんの「使用温度」は【常温】、「筆圧」は【高】です。
よって、最適条件を再現することができ、予想通りに書き心地「良い」となりました。
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一方、Bさんの「使用温度」は、Bさんが標高の高い土地に暮らしていて、なおかつ屋外での使用を想定しているため、使用温度が【低温】となってしまうのです。
最適条件の「使用温度」が【常温】だからといって、Bさんの「使用温度」を【低温】→【常温】へ変えることは、現実的に不可能です。
よって、Bさんでは「書き心地」が「普通」になってしまったのです。
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また、Cさんの「使用温度」は、Bさんと同様に標高の高い土地に暮らしていて、なおかつ屋外での使用を想定しているため、使用温度が【低温】となってしまうのです。
最適条件の「使用温度」が【常温】だからといって、Cさんの「使用温度」を【低温】→【常温】へ変えることは、現実的に不可能です。

そして、
Cさんの「筆圧」は【低】となっています。
Cさんは高齢のため、高い筆圧で文字を書くことができないのです。

よって、Cさんでは「書き心地」が「悪い」になってしまったのです。
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『 私の使用環境/条件では、最適条件通りにならないんです』

このように、設計パラメータを最適化したとしても、その最適条件に設定できない因子、つまり「(実際には)コントロールできない因子」という因子があります。

最適化してもコントロールできないのであれば、そのような因子は、実験で最適化する意味がありません。
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ということで、
(設計)条件には、「コントロールできる因子」と「コントロールできない因子」があります。
よって、条件をこれら2つの因子に分けることが重要なのです。

品質工学で大切な事(その1)は、
【「コントロールできる因子」と「コントロールできない因子」に分ける】
です。
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「コントロールできる因子」のことを、品質工学では「制御因子」と呼称しています。
これは「直交表に割り付ける因子」になります。

「コントロールできない因子」のことを、品質工学では「ノイズ(因子)」と呼称しています。
これは「直交表の外に配置する因子」になります。
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「コントロールできる因子(制御因子)」は、直交表に割り付けます。
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「コントロールできない因子(ノイズ因子)」は、ノイズの組み合わせを作ります。
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「コントロールできる因子(制御因子)」は左に配置し、「コントロールできない因子(ノイズ因子)」は右に配置します。
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そして、「コントロールできる因子(制御因子)」の18通りの組み合わせと、「コントロールできない因子(ノイズ因子)」の6通りの組み合わせの交差する部分に実験結果のデータを配置します。
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L18直交表の1行目の書き心地のデータは、プロットしたような結果になりました。
「コントロールできない因子(ノイズ因子)」の組合せは、(この場合は)6つあります。

この1行目の条件の場合、
「Aさん」は、【使用温度:常温、筆圧:高】の組み合わせでしたので、「書き心地」は良くなります。
「Bさん」は、【使用温度:低温、筆圧:高】の組み合わせでしたので、「書き心地」は普通になります。
「Cさん」は、【使用温度:低温、筆圧:低】の組み合わせでしたので、「書き心地」は悪くなります。
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L18直交表の2行目の書き心地のデータは、プロットしたような結果になりました。
「コントロールできない因子(ノイズ因子)」の組合せは、同じく(この場合は)6つあります。

この2行目の条件の場合、
「Aさん」は、【使用温度:常温、筆圧:高】の組み合わせでしたので、「書き心地」は普通になります。
「Bさん」は、【使用温度:低温、筆圧:高】の組み合わせでしたので、「書き心地」は普通になります。
「Cさん」は、【使用温度:低温、筆圧:低】の組み合わせでしたので、「書き心地」は普通になります。
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「理想的な最適条件」の書き心地のデータでは、プロットしたような結果になります。

「Aさん」は、【使用温度:常温、筆圧:高】の組み合わせでしたので、「書き心地」は良くなります。
「Bさん」は、【使用温度:低温、筆圧:高】の組み合わせでしたので、「書き心地」は良くなります。
「Cさん」は、【使用温度:低温、筆圧:低】の組み合わせでしたので、「書き心地」は良くなります。
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この6つの書き心地について、「平均値」と「バラツキの大きさ」を計算で求めます。
そして、「平均値」と「バラツキの大きさ」のそれぞれについて、要因効果図を作成します。
※要因効果図の作成のやり方は、先ほど説明した通りです。
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品質工学で大切な事(その2)は、
【「平均値」と「バラツキの大きさ」で評価する】
です。
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(書き心地の)平均値は、高い方が理想的です。
(書き心地の)バラツキの大きさは、小さい方が理想的です。

そのようになるような最適条件を選びます。
黄色で示した(設計)条件は、「平均値」と「バラツキの大きさ」がトレードオフになっています。
そのような場合は、「平均値」と「バラツキの大きさ」のどちらを優先するかを技術者が決めます。
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「コントロールできない因子」の組み合わせにおいて、「平均値が高く※」かつ「バラツキが小さい」という結果が得られれば、誰でも書き心地が高くなり、みんなハッピーになれます。
※今回のペン先の設計パラメータの最適条件では、「理想の平均値は高い」となりますが、別事例の開発では、「理想の平均値は低い」となるケースもあります。つまり、理想の平均値はケースバイケースで変わります。

品質工学で大切な事(その3)は、
【「コントロールできない因子」に影響されない最適条件を求める】
です。
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まとめます。
品質工学的な実験のポイントは以下の3つです。
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・条件を「コントロールできる因子」と「コントロールできない因子」に分ける
・「平均値」と「バラツキの大きさ」で評価する
・「コントロールできない因子」に影響されない(影響され難い)最適条件を求める
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このような最適条件を求めていこうとするのが「品質工学」です。
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【トピック】をご紹介します。
今回ご紹介しましたL18直交表の他にも、いろんな種類の直交表があります。

これはL9直交表です。
割り付けることができる制御因子は、4個(各3水準×4個)です。
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L18直交表とL9直交表を比較してみましょう。

L18直交表は、「18通りの条件」で実験しますが、L9直交表は「9通りの条件」で実験します。
つまり、1/2の規模の実験になります。

L18直交表は、割り付け可能な因子は「8個」ですが、L9直交表は「4個」です。
つまり、1/2の規模の実験になります。

L18直交表は、総当たり「4374通り」の中から一番良い条件が探しますが、
L9直交表は、総当たり「81通り(3^4=81)」の中から一番良い条件を探します。
つまり、1/54の規模の実験になります。

ということで、L9直交表は、1/2の規模の実験の割には、探索範囲が狭く、実験効率の悪い直交表ということになります。
割り付ける因子が4個しか存在しないのであれば、L9直交表を使いますが、割り付ける因子が8個あるのにL9直交表を使うのはナンセンスです。
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次に2水準系のL8直交表をご紹介します。
割り付けることができる制御因子は、7個(各2水準×7個)です。
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L18直交表とL8直交表を比較してみましょう。

L18直交表は、「18通りの条件」で実験しますが、L8直交表は「8通りの条件」で実験します。
つまり、10通り少ない実験です。

L18直交表は、割り付け可能な因子は「8個」ですが、L8直交表は「7個」です。
つまり、因子は1個少ないだけです。

L18直交表は、「3水準」で振りますが、L8直交表は「2水準」で振ります。
つまり、水準の数は1つ少なくなるのですが、制御因子の傾向を見るのであれば、それほど支障は無いのかもしれません。

ということで、L8直交表は、割り付ける因子がそれほど変わらないにも関わらず、実験回数は半分以下になりますので、とても便利な直交表ということになります。
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品質工学によく使う直交表の一覧です。

制御因子の総数と、2水準/3水準の数によって、6種類あります。
御自身の実験規模にあった直交表を選ぶことが重要です。
各種直交表の割り付けは、エクセルファイルがダウンロードできるようになっておりますので、興味がありましたらぜひお試し下さい。
https://masudaqe.blog.ss-blog.jp/2018-04-14
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このプレゼン(30分程度です)をご希望の方は、下記のメールアドレスにご連絡下さい
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