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「交互作用が大きいとシステムが不安定」という考え方は正しいのか? [【その他の品質工学関連】]

2018年3月20日
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「交互作用が大きいとシステムが不安定」という考え方は正しいのか?
(安定/不安定なのは条件であり、システムではない)

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教科書(芝野広志:品質工学をいかに理解したか, 品質工学会誌,Vol.10,Special issue,pp68)では、以下の通りです。
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” また、直交表を使う目的は制御因子間の交互作用の有無を検査するためであり、交互作用が大きくて再現性のない結果となったときには、そのシステムは諦めろと言われても、担当者としては、その後どうしたらよいか途方にくれる。(中略)。再現性のない場合には交互作用を調べ、とにかくよい条件を探そうとしてしまう。しかし、交互作用を調べてよい条件が見つかったとしても、元のシステム自体が不安定なのだから、市場や量産現場でトラブルを発生する可能性が高い。
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このように、「交互作用が大きいとシステムが不安定」という考え方が示されています。

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「交互作用が大きいとシステムが不安定」という考え方、間違っています。
正しくは、
「交互作用が大きいと(推定値と確認値の)利得の再現性がない」です。
 →これがいつの間にか、(推定値と確認値の)が(直交表の実験間の)にすり替わり
「交互作用が大きいと (直交表の実験間の)の再現性がない」になってしまったのではないか。

ここで
「(推定値と確認値の)利得の再現性」

「(直交表の実験間の)利得の再現性」
は、大きく意味が異なります。

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「(推定値と確認値の)利得の再現性」について

これは要因効果図から求めたSN比の推定値の利得と
確認実験から求めたSN比の確認値の利得を比較し、

利得の再現性が高い(つまり交互作用が小さい)と、要因効果図は信頼できる。
利得の再現性が低い(つまり交互作用が大きい)と、要因効果図は信頼できない。
ということです。

交互作用の大小は、要因効果図の信頼性と関係があります。

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「(直交表の実験間の)利得の再現性」について

L18直交表実験の結果、
No.1:23db
No.2:19db
・・・
No.18:27db
という結果が得られたとします。
この実験(No.)間の利得は、制御因子間の交互作用の大小によらず(下流で)再現します。

もし再現しないのなら、(品質工学以前の問題として)実験自体がおかしいのです。

交互作用の大小は(下流での)再現性と全く関係がありません。

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「交互作用が大きいとシステムが不安定」という考え方、間違っています。
正しくは、
「交互作用が大きいと(推定値と確認値の)利得の再現性がない」です。

 →これがいつの間にか、(推定値と確認値の)が(直交表の実験間の)にすり替わり

「交互作用が大きいと (直交表の実験間の)の再現性がない」になってしまったのではないか。

 →これが いつの間にか(直交表の実験間の)が抜けて

「交互作用が大きいと 利得の再現性がない」になってしまい、

 → これがいつの間にか「利得」→「システム」にすり替わり

「交互作用が大きいと システムの再現性がない」になってしまい、

 →これがいつの間にか「再現性がない」→「不安定」にすり替わり

「交互作用が大きいと システムが不安定」になってしまったのではないか。

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教科書(矢野耕也:品質工学の基礎とパラメータ設計, 精密工学会誌,Vol.81,No.11,pp1012)では、以下の通りです。
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"なお、(中略)、制御因子間の交互作用が大きいなどの原因がいくつか考えられるが、実験室以降の下流や市場における、実験結果の再現性が悪いことを実験段階で示していることに等しく、直交表の実験が単に実験回数を減らすものではないことを意味している。"
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ここで
『実験結果の再現性が悪い』という言葉が明確でないので、以下のどちらなのか?悩むことになります。

・【実験結果(から得られた要因効果図)の再現性が悪い】なのか?
・【実験結果(の値)の再現性が悪い】なのか?

どちらで理解するかにより、意味合いが全く異なってしまいます。

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正しくは、【実験結果(から得られた要因効果図)の再現性が悪い】のです!

【実験結果(の値)の再現性が悪い】なのか?は間違いです。

メッキ加工の事例で説明で説明します。
※ 出力「メッキ厚」、ノイズ「メッキ液の劣化」です。
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L18のNo.1 16μm  ±1μm → SN比:高
L18のNo.2 10μm  ±3μm → SN比:低
L18のNo.3 23μm  ±4μm → SN比:中
・・・
L18のNo.18  9μm ±12μm → SN比:低
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下流でばらつく原因は「ノイズ」です。
だから、ノイズを与えてパラメータ設計をするのです。
この場合は、「メッキ液の劣化」というノイズを与えて実験し、条件によってバラツキ(±1μm、±3μm、±4μm・・・12μm)が変わります。
L18のNo.1は、バラツキが小さいので、SN比は高くなります。従って、下流で安定した条件と言えます。

これらの結果は、上流で実験しても、下流で実験しても、同じ結果が得られます。
なぜなら、ちゃんとノイズを与えて実験しているからです。

交互作用が大きいと、要因効果図の再現性が悪いのであって、実験結果の値の再現性とは関係ないのです。

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「安定/不安定なのは条件であり、システムではない」→これが一番大切です。

上流でSN比が低い条件は、下流で不安定な条件です。
上流でSN比が高い条件は、下流で安定な条件です。
【安定/不安定な条件は、SN比で決まります】

上流で交互作用が大きいシステム(つまり、推定値と確認値の利得の再現性がない)は、下流で交互作用が大きいシステム(推定値と確認値の利得の再現性がない)です。
上流で交互作用が小さいシステム(つまり、推定値と確認値の利得の再現性がある)は、下流で交互作用が小さいシステム(推定値と確認値の利得の再現性がある)です。

交互作用が大きい/小さいシステムは存在するが、安定/不安定なシステムは存在しません。
安定/不安定は、システムではなく、条件なのです。

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まとめです。

「交互作用が大きい」は「(推定値と確認値の)利得の再現性がない」のであって
「システムが不安定」ということではない。

安定な条件が欲しければ、SN比の高い条件を探そう!

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