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QES2009『非線形成分を考慮したT法の研究』発表用資料の紹介 [【その他の品質工学関連】]

2009年度の品質工学会 研究発表大会でポスター発表しました資料をJPG画像に変換し、ブログに掲載致します。

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発表番号:【107】
発表日:2009年6月30日(火)→大会2日目です
発表形式:【ポスター発表】
論文表題:『非線形成分を考慮したT法の研究』
発表者名:増田雪也
詳細論文:7ページ版の詳細論文(PDFファイル)→こちらもぜひご覧下さい
Q&Aなどの追記:こちら
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開発の概要を述べます。
T法は、【信号】と【項目】の関係をゼロ点比例式のSN比で『重み付け』しています。
【信号】と【項目】の関係に非線形成分が強く存在すると、
T法の推定精度が悪化するという問題点があります。
そこで本研究では、非線形成分を考慮したT法(「非線形T法」と呼称します)を考案しました。
その結果、T法の推定精度を向上させることができました。
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『重み付け』として用いるSN比について述べます。
T法ではグラフのように、ゼロ点を通る直線からのズレをゼロ点比例式のSN比で計算し、『重み付け』として用いています。
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左のグラフは、【信号】と【項目1】の関係をプロットしてあります。
この場合、【信号】と【項目1】は非常に相関が強く、【項目1】は活用できるデータと言えます。
当然、重み付けは重くなるわけです。
SN比も高くなります。
真ん中のグラフは、【信号】と【項目2】の関係をプロットしてあります。
この場合、【信号】と【項目2】の間には相関が無く、【項目2】は活用できないデータと言えます。
当然、重み付けは低くなるわけです。
SN比は「0」になります。
右のグラフは、【信号】と【項目3】の関係をプロットしてあります。
この場合、【信号】と【項目3】は相関がそこそこ強く、【項目3】はそこそこ活用できるデータと言えます。
よって、重み付けは中位となるわけです。
SN比は中位になります。
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従来のT法の問題点について述べます。
グラフのように、【信号】と【項目】の間に非線形成分が存在すると、たとえバラツキが小さかったとしても、ゼロ点比例式のSN比で重み付けを導き出しているので、データを有効活用することができません。
そこで、何とか工夫次第でこの非線形成分を含んだデータを活用できないかと考えました。
その答えが、「非線形成分を補正する」です。
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もしも、左のようなグラフの関係を、右のグラフのように補正できたとすると、データを有効活用することができ、T法の推定精度を向上させることができることになります。
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補正は、ただ単純に非線形成分を取り除けば良いというものではありません。
左上のグラフは、非線形成分があり、かつバラツキもあります。
このバラツキは、重み付けとして用いますので、バラツキ成分はそのままで、非線形成分のみを補正しなければなりません。
よって、左上のグラフを補正すると、右上のグラフのようにならないといけません。
右下のグラフのように補正してしまうと、バラツキ成分が無くなってしまいますので、正確な推定ができないことになってしまいます。
そこで、「バラツキ成分はそのまま」で、「非整形成分のみを補正する」ような補正方法を検討しました。
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検討した補正方法について述べます。
左のグラフを右のグラフのように補正する場合で説明します。
補正するのは、グラフの縦軸です。
つまり、「項目値x」を補正し、「補正した項目値x’」とします。
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やり方の説明です。
2次の成分までを非線形補正しますので、上の表のように「項目値x^2」を求めます。
そして、エクセルの「LINEST」関数を用いて、「信号値M=・・・」の多項式を求めます。
この多項式に、「項目値x1=13.46」を代入すると、
M=5.27となります。
ここで、「補正した項目値x1’」について、x1’=Mとします。
よって、x1’=5.27となります。
このようにして補正したいくと、下の表のように「補正した項目値x’」が求まります。

なぜこんな方法で補正ができるのだろう?と疑問を感じる方も多いかと思いますが、
この方法だと、バラツキ成分はそのままで、非線形成分を補正することができます。

↓のエクセルファイルを使って、上記の非線形補正の計算をすることができます。
3.3 非線形補正の手順の計算.xls
興味のある方はご活用下さい。
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この非線形成分を補正するT法で解析した事例を紹介します。
テーマは「我が家の電気使用量を推定する」です。
【信号】は、【我が家の月別の電気使用量】です。
【項目】は、【月間の平均気温】、【月間の平均最高気温】、・・・・【月間の旅行日数】です。
これら【項目】の数値を用いて、その月の【電気使用量】を推定できるか?というテーマになります。
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推定結果です。
グラフの横軸は、「信号の真値」つまり正しい電気使用量です。
グラフの縦軸は、「信号の推定値」つまりT法で推定した電気使用量です。
左のグラフは、従来のT法で推定した結果です。
推定精度の正確さを総合推定のSN比で計算すると、「−2.62db」でした。
右のグラフは、今回紹介した非線形成分を考慮したT法で推定した結果です。
推定精度の正確さを総合推定のSN比で計算すると、「−0.20db」でした。
よって、非線形成分を考慮したT法の方が、推定精度は「2.42db」向上していることがわかります。
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電気使用量の推定では、上記のように非線形成分を補正することにより、推定精度を向上させることができました。
ということは、電気使用量の推定では、【信号】と【項目】の間に、非線形成分が存在していたことを示しています。
そこで、どの【項目】に非線形成分が存在していたのかを検証してみたいと思います。
棒グラフをご覧下さい。
横軸は、今回の電気使用量で用いた8つの【項目】です。
縦軸は、重み付けとして用いたSN比の値です。
【項目1】と【項目2】と【項目3】については、「従来のT法」よりも「非線形補正したT法(非線形T法)」の方が重み付けのSN比が高くなっています。
よって、【項目1】と【項目2】と【項目3】には、非線形成分が存在していたことがわかります。
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【信号】と【項目】の間に非線形成分が存在しない場合、「従来のT法」と「非線形T法」の推定精度は同じになります。
【信号】と【項目】の間に非線形成分が存在する場合、「従来のT法」よりも「非線形T法」の方が推定精度は高くなります。
つまり、非線形T法の方が汎用的に使える方法と言えます。
もしも、非線形T法で試したいデータなどありましたら、メール(info2qe@abox3.so-net.ne.jp)にてご連絡いただければ幸いです。

Q&Aなどの追記はこちら

RQES2021S_masudaqe.057.jpg
非線形T法の解析は、こちらの解析ソフト「SignalCatcher」をご利用下さい。
※【無償版】で「T法」および「非線形T法」の解析ができます。

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