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長野県品質工学研究会の活動報告(品質工学会誌2018年6月号広場の記事より抜粋) [長野県品質工学研究会の活動報告(転載)]

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長野県品質工学研究会
 2018年2月9日(金)、品質工学実践交流大会を塩尻インキュベーションプラザにて開催した。内容は以下の通りである。
1)あいさつ 長野県品質工学研究会 会長 中西徹
2)品質工学実践事例(3件)
「丸パイプを使ったオフィス用いすの反力装置開発」タカノ(株) 中原健司
「T法を用いた我が家の電気使用量の推定」(有)増田技術事務所 増田雪也
「MT法を使った波形の判別事例」日本電産サンキョー(株) 中西徹
3)自由討論および相談会※事例発表ポスター前で発表者とのディスカッション
4)特別講演会「IoT・AIの活用を加速する技術『MTシステム』〜イプシロンロケット自律診断の例から〜」アングルトライ(株)手島昌一

 2018年2月18日(金)、第10回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)にて開催した。以下に示す2つの事例発表および共通テーマについてディスカッションした。
【事例発表】
(1)「もっといい品質工学」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
「もっといい品質工学」とは、『誰もが簡単に使える実践的な品質工学』というコンセプトで、「品質工学の慣習」や「田口玄一氏の考え方」を追認せず、品質工学を再解釈したものです。ポイントは、教科書通りの品質工学に執着し過ぎないことです。具体的には、次の5つの点です。
(a) 基本機能はアバウトでOK
(b) 基本機能はたくさんでもOK(多目的な最適化)
(c) 静特性でもOK
(d) 利得の再現性は、悪くてもOK
(e) 直交表は使った方がベター(機能性評価をチヤホヤし過ぎない)
(2)「2段階設計、そのネーミングの問題点(だから品質工学は誤解される)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
「2段階設計」というネーミングの問題点について紹介した。大切なのは「2段階」か否かではなく、最初にバラツキを小さくし、次に目標値に合わせ込むという順番である。また、バラツキと目標値の合わせ込みは、実際には同時に実施するので、「1段階(同時並行)設計」が適切な表現である。
【共通テーマ】
「MTシステムによる工作機械の異常検知」
摩耗状態が異なるバイトを用いて切削加工を行い、同時測定したAEセンサと加速度ピックアップの測定データについて特徴量(存在量・変化量、FFT重心)を計算した。この計算した特徴量から、バイトの摩耗状態がMT法により判別可能かどうか検討し、摩耗の状態が大きく異なる場合には判別可能であることが分かった。

 2018年3月9日(金)、第11回研究会を長野県工業技術総合センター精密・電子・航空技術部門(長野県岡谷市)にて開催した。以下に示す4つの事例発表および共通テーマについてディスカッションした。
【事例発表】
(1)「直交表は条件を満遍なく均等に振るための道具です(交互作用をチェックする道具ではありません)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
交互作用の大小は、人間にはコントロールできないのでチェックしても無駄である。直交表は、条件を満遍なく均等に振るための道具として、誰もが気軽に使えば成果も出る。
(2)「混合系の直交表に執着するのはナンセンス(L9直交表だって普通に使おう)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
品質工学では、混合系の直交表(L18など)が推奨されているが、交互作用が各列に均等に配分されても、主効果のみが要因効果図に現れる訳ではないので、混合系を使うメリットが無い。従って、非混合系でも普通に使って大丈夫である。
(3)「品質工学では交互作用の扱いがダブルスタンダードな件について(交互作用は、悪か?良か?)」 ((有)増田技術事務所 増田雪也)
品質工学では、制御因子と制御因子の交互作用は悪で、制御因子とノイズの交互作用は良とされている。どちらも同じ交互作用なのに、扱いがダブルスタンダードなことの問題点を指摘した。
(4)「ワイブル分布によるオンライン品質工学」(信州大学 岩下幸廣)
生産機械の定期保全、検査について、ワイブル分布を用いオンライン品質工学の考え方を使って最適化する方法を検討した。また、事例研究を行った。
(5)「素人が素人に品質工学を説明すると…」(日本電産(株)塚本ちさと)
品質工学を知らない人に、品質工学をどのように理解して貰うかを考えた。
・身近な物での説明
・専門用語を出来るだけ使わない
・もの作りの上流過程で使用する
・品質工学の神髄はパラメータ設計であり、品質を良くする事は出来ません。
・品質工学は、研究会の支援が必要
この内容で、素人が素人に説明した。
【共通テーマ】
「MTシステムによる工作機械の異常検知」
切削加工時のセンサデータ(AE、加速度)から特徴量を抽出し、RT法により工具の摩耗状態を推定した。その結果、MT法と同様に摩耗の程度を判別可能であることが分かった。
((有)増田技術事務所 増田雪也 記)
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