ブログプレゼンテーション『品質工学の紹介』7)良い条件の求め方(詳細) [シリーズ「品質工学の紹介」]
良い条件の求め方について、もう少し詳しく述べます。
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良い条件を求める【Step2】では、「いろんな条件の組合せを作る」ことをしました。
腕時計の例でいうと、上の表のような設計条件の中から、いろんな条件の組合せを作ります。
では、どうやって「いろんな組合せ」を作ったら効率的な実験ができるでしょうか?
※この条件を総当たりで実験すると、4374通りの実験になります。
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品質工学を用いない従来のやり方では、上の図のように、実験を行っていきます。
先ず、「ゼンマイの厚さ」を[0.1mm]と[0.2mm]に設定して実験を行います。
そして、どちらか性能の良い方を選び、次に「ゼンマイの材質」を[鉄]と[銅]と[Al]に設定して、再び実験を行います。
そして、性能の良いものを選び、次に「ゼンマイの長さ」を変えて実験します。
このようにして、全ての条件で実験し、最終的に良い条件を求めます。
しかし、もしかすると、最初に選択した「ゼンマイの厚さ」:[0.1mm]を[0.2mm]に変更したら、もっと性能が上がるかもしれません。
『絶対にそんなことはない』とは、言い切れません。
なぜなら、全ての条件を、総当たりで実験していないからです。
よって、モレた条件の中に、もしかすると良い条件があるかもしれません。
モレた条件は大丈夫でしょうか?
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それでは、モレのない完璧な開発をするには、どうしたらよいでしょうか?
答えは、「全ての条件を総当たりで実験する」ことです。
この腕時計の場合で、総当たり数を計算してみましょう。
2水準の条件が1つと、3水準の条件が7つあります。
よって、総当たり数は、
「2の1乗」×「3の7乗」=「4374通り」
になります!
こんなに多くの実験を、通常業務の中で行うことは可能でしょうか?
こんなに数が多くては、やる気も失せてしまいます。
では、どうしたらよいのでしょうか?
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ある法則に従って、18本の黄色いラインの組合せで実験すると、全設計因子を満遍なくチェックできる方法があります。
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このように、18本の黄色いラインで実験すれば、
総当たりに近い結果が得られるのです。
だから効率的な開発が品質工学で可能なのです。
その「ある法則」とは「L18直交表」という道具です。
これからL18直交表についてご紹介します。
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L18直交表とは、18条件の組合せを作ります。
これはランダムな組合せではなく、ちゃんとバランス良く配置された賢い組合せになっています。
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実際の組合せを見てみたい方は、弊社のホームページからL18直交表の割り付けが体験できるエクセルファイルを無料でダウンロードすることが可能です。
https://masudaqe.blog.so-net.ne.jp/2011-01-02-6
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L18直交表のエクセルファイルは、こんな感じになっています。
左側の水色のセルに設計条件などを記入すると、右側にパッと割り付けができます。
ぜひお試し下さい。
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ということで、このように18通りの組合せを作るのです。
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L18直交表を使って、18個の組合せで腕時計を作ったら、ノイズを与えて実験します。
すると、18個のSN比と感度が得られます。
この18個の組合せの中には、ノイズに強い組合せや、弱い組合せがあります。
また、感度の高い組合せや、低い組合せがあります。
この18個のSN比と感度を用いて解析を行うと、↓のようなグラフを得ることができます。
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18個のSN比と感度を解析すると、上の図のような「要因効果図」と呼ばれるグラフを得ることができます。
この「要因効果図」は、各設計条件の効果を表しています。
例えば、「ゼンマイの厚さ」では、[0.1mm(水準1)]の方がSN比が高く、これが最適条件となります。
また、「ゼンマイの材質」では、[アルミ(水準3)]がSN比が一番高く、これが最適条件となります。
「ゼンマイの長さ」では、SN比はどれも同じですので、感度が高い[150mm(水準1)]を選びます。なぜならば、理想の感度は傾き「1」に近いことですので、感度のdbで計算すると、「0db」に近い条件が最適となるからです。
その他の設計条件についても同様に、SN比が高く、感度が0dbに近い水準を選んでいくと、良い条件の組合せが求まることになります。
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補足説明をします。
L18直交表による実験では、
実際には総当たりの実験をしていませんので、
抜け漏れの可能性はあります。
しかし、少ない実験回数(たった18回)で、結構いい条件が求まるのです。
だから効率的な開発が可能となります。
これが直交表を使うメリットです。
直交表は、完璧を求める道具ではなく、効率を求める道具なのです。
※完璧を求めたい人は、総当たりで実験すればOKです。
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まとめです。
品質工学では、
・総当たりで実験するのは難しいので
・L18直交表を使うことにより
・少ない実験回数で
・総当たりに近い条件が求まる
だから、効率的な開発が可能となります。
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【目次】
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1)はじめに&目次
2)品質工学の概要
3)品質工学での「良い」とは何か?
4)なぜ、市場や工場でトラブルが減少するのか?
5)なぜ、効率的な開発ができるのか?
6)機械式腕時計の良い設計条件
7)良い条件の求め方(詳細)
8)なぜ、コストを低減できるのか?
9)品質工学の導入方法
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2009-08-04 00:12