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【No.5 実験とまとめ】 [シリーズ「プレス打抜き加工条件の最適化」]

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左の写真は、プレス装置の【打抜きダイセット】です。
右の図は、そのイラスト図です。
【打抜きダイセット】が、上から【プレス機】によって押さえつけられると、パンチが下方へ移動し、試験片を打ち抜く仕組みになっています。
その際に、上部に設置されたストレインゲージによって、打抜き荷重を測定することができます。


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L18直交表実験を行う前に、予備実験を行います。
以下のような条件で、繰り返し3回の測定を行いました。
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 ・パンチ材質:SKD
 ・パンチシャー角:0deg
 ・クリアランス:20μm
 ・板押さえ力:535N
 ・打抜きスピード:40mm/s
 ・潤滑:なし
 ・金型の摩耗:あり
 ----------------------
その結果、
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 ・入力と出力の関係は、リニアである
 ・繰り返し誤差は小さい
 ----------------------
ということが判明しました。
よって、L18直交表実験へ進むことにしました。


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L18直交表実験の結果を示します。
18通りの組合せで、せん断周囲長さを3水準(8、12、16mm)、ノイズを2水準(摩耗なし、摩耗あり)で実験を行いました。
よって、データ数は、18×3×2=108個になります。
約2週間で実験を完了しました。


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L18直交表実験により、18通りの制御因子の組合せで、入出力のデータが得られます。
18通りの内、1番目(実験No.1)と16番目(実験No.16)の結果について、その生データと、算出したSN比を示します。
左のグラフの実験No.1は、「○:摩耗あり」と「●:摩耗なし」のばらつきが大きくなっています。
つまり、「摩耗というノイズに弱い」ということになります。
ノイズに対する強さを表すSN比は、【7.9db】でした。
右のグラフの実験No.16は、摩耗によるばらつきが小さくなっています。
つまり、「摩耗というノイズに強い」ということになります。
ノイズに対する強さを表すSN比は、【11.6db】でした。
よって、右側の実験No.16の方が、「良い条件」ということになります。


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L18直交表実験により、18個のSN比と感度が得られます。
この18個のSN比と感度を解析すると、各制御因子の効果を算出することができます。
それをグラフにしたものが【要因効果図】です。
パンチの材質は、SKDよりも超硬の方が高くなっています。
パンチシャー角は、3つとも同じレベルなことがわかります。
このように各制御因子の効果が明らかになります。
(技術者にとっては、この瞬間がとても嬉しい!)

次に、利得の再現性を確認するために、【最適条件】と【比較条件】を設定した実験を行います。


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確認実験を行った結果は、以下の通りでした。
 ----------------------
 最適条件:11.04db
 比較条件:7.49db
 ----------------------
よって、利得の確認値は【3.55db】となります。
利得の推定値は【3.61db】でしたので、「利得の再現性は良好である」といえます。
つまりこれは、「要因効果図の信頼性が高い」ことを意味しています。


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確認実験の結果をグラフにプロットしてみます。
左のグラフが【最適条件】で、右のグラフが【比較条件】です。
【最適条件】は、摩耗によるばらつきが小さくなっています。
つまり、摩耗というノイズに強い条件であることがわかります。


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バリの大きさでも、【最適条件】と【比較条件】を比べてみました。
両者とも、「●:摩耗なし」の場合は、切れ味が良好ですので、バリは小さくなっています。
しかし、「○:摩耗あり」の場合は、【最適条件】の方がバリは小さく、【比較条件】の方がバリが大きくなっています。


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バリの大きさは、1つの試験につき6カ所の部分を測定しました。
その6つのばらつきに着目してみます。
すると、
----------------------
【最適条件】では、その6つのばらつきは小さく、
【比較条件】では、その6つのばらつきは大きく、
----------------------
なっていることがわかります。

まとめると、品質工学で求めた【最適条件】では、「バリの大きさ」という評価でも有意であることがわかりました。


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まとめです。
「プレス打抜きの最適条件が求まりました」

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【No.5 実験とまとめ】→【No.6 プレス打抜きの基本機能】

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 e-mail:info2qe@abox3.so-net.ne.jp


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